私にしか聴こえない鈴の音(ね)が鳴り響く。
ふたつの音で、私に告げる。


――好キニナッテハイケナイ――


火照り。動悸。憧憬。
ゆっくりと私を侵蝕するもの。


――好キニナッテハイケナイ――


水底に沈めた希望が、浮き上がろうとしている。
凪いだ水面(みなも)に、漣(さざなみ)を立てる。


――好キニナッテハイケナイ――


笑わないで。何にも知らないくせに。
触れないで。鈴が五月蠅く揺れるから。


――好キニナッテハイケナイ――


一時(ひととき)の幸せは、いつも残酷な刃(やいば)となって。
なのにまた、欲してしまって。
麻薬のように。


――好キニナッテハイケナイ――


何故、芽吹こうとするのか。こんなにも拒んでいるのに。
毒にしかならぬ花なら、いっそ枯れて。


――好キニナッテハイケナイ――


気付く前に、種を燃やせていたら。


――好キニナッテハイケナイ――


私にしか聴こえない鈴の音(ね)が鳴り響く。
ふたつの音で、私に告げる。


――トクトクトクトク――
――
好キニナッテハイケナイ――


黙れ黙れ黙れ。
枯れろ枯れろ枯れろ。


私にしか聴こえない鈴の音(ね)が鳴り響く。
悲鳴のような音色で、心を惑わせる。


見えない其の在処は、最も愚かな場所だから。


此の鈴を踏み砕いても、もう鳴り止まない。






<あとがき> ※……という名のただの戯言(しかも無駄に長い)ですので、余韻・雰囲気を壊したくない方は、読み飛ばすことをおすすめします。



BLEACH二次創作第3弾は、またルキアさんです。海ルキです。でも、海←ルキです。切ないです。
タイトルは『鈴の音』。……それだけ聞くと、剣パッチみたいっスね(笑)。


「気付く前に、種を燃やせていたら。」
恋心は止められません。自分ではどうにもなりません。
何もかも、もう既に遅く。
幸せと苦しみは背中合わせで。どちらも切り離せなくて。
隣の心地良さに、愛しさに、導かれて貰った沢山の大事なものに、出逢えたことを感謝して。
だけど、「いっそのこと出逢わなければ」と思うこともあったかもしれない。
「すべてが最初から無ければ」と。


海燕ね、反則ですよ。惚れるなって方が無理だもの。あんないい男。私がルキアでも惚れます。
生きてきた年数だって、一護(私はこの二人に恋愛感情は求めないが)や恋次よりずっと長いわけだし。
勝負になりませんよ。(←また恋ルキ派にあるまじき発言をしてます)


岩鷲はもちろん、空鶴にとっても、さぞかし自慢の兄だったことでしょうね。
……奥さんにとってもね……(ボソッ)
何だ、海燕! その他の人に向けるものとは明らかに違う笑顔は! 信頼と気遣いに、少しだけ甘えにも似た安堵をミックスしたような笑顔は! 
さては奥さんは清楚系のお姉さんタイプか? そうなのか!?



何で私はあんなに「辛いルキたんはもう見たくない」とか言いながら、こーゆーの書いちゃうんでしょう……


でもまあ、何でであろうと、降りてきてくれなきゃ当然書けないわけで。
半平太の海ルキイラ(「お弁当1」)に台詞をつけた経緯で生まれました(これの方がエピソード的には前ですが)。
それ(「春」)はほのぼのなんだけど、「こう思いもしただろうなぁ」と。
ルキたんは相当私の中に巣くっている模様です。(←いや、あんたが寄生してるんです)
同性だしね、尚更ね。ルキア至上主義だしね(私的には、ルキたん=プリンセス)。


どうでもいい話ですが、オリキャラに「海瀲(カイレン)」ってのがおりまして。
名前が出てきた時にはそりゃあビックリしたものですが……こんないい男と似た名前で光栄です。
よって変える気はありません(笑)。


回想でもいいから、海燕再登場熱烈希望! もっと知りたいし、あれだけじゃ全然足りません!!






(☆ この作品・及びあとがきは、2004年10月に書かれたものです)















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