濃紺の闇に、浮かぶか細い光。瞬く光。

ずっと嫌いだった。今にも消えてしまいそうに頼りないそれが。

決して手の届かない天上で、俺達を見下ろしているそれが。






星が好きだと、あいつはよく言った。



お前は、太陽でも月でも雲でも花でも、何でも好きじゃねえか。



俺がそう言うと、中でも星は特に好きだと答えた。



ある時理由を尋ねてみた。



きらきらして綺麗だからだ。宝石とはこのようなものなのだろうか。



実に下らない。



あの星とあの星を繋ぐと何かの形に見えるとか。

どれも同じよういて、色や明るさが違うとか。



何が楽しいんだか、ガキみたいな顔をして、面白いだろう? と同意を求める。



興味ねえよ。夜道が見えるほど明るいわけでもなし、何の役にも立たねえし、中途半端じゃねえか。



俺が突っ撥ねると、少し拗ねたように唇を尖らせて、そして、



風情の無い奴だ。



この街には不似合いな表情で、ふっと笑う。



星が好きだと、あいつはよく言って、少しでも近付こうと樹の上から眺めていた。

俺の嫌いな星が好きだと、いつも、いつまでも、眺めていた。




小さな掌を、触れさせようとするかのように、懸命に伸ばして。

夜に溶けてしまいそうな姿で。







濃紺の闇に、浮かぶか細い光。瞬く光。

ずっと嫌いだった。今にも消えてしまいそうに頼りないそれが。

まるであいつのようで。

月に、朝に攫われて、いつか見えなくなるようで。






ガキみたいに、あの星を捕まえたかったのは、この俺自身だ。






濃紺の闇に、浮かぶか細い光。瞬く光。

遠くできっとあいつが見ている星は、決して手の届かない天上で、俺を見下ろしている。






目を逸らすのは、ただ見上げるだけは、もう止めだと叫んでやろう。

喉が裂け、血が溢れても、怒鳴り続けてやろう。

凍った指先で耳を塞いだ野良犬達にも聞こえるように。

俺達が見るべき本当の星は、あんなものじゃないと教えてやる為に。






<あとがき> ※……という名のただの戯言(しかも無駄に長い)ですので、余韻・雰囲気を壊したくない方は、読み飛ばすことをおすすめします。




――届かぬ牙に 火を灯す  あの星を見ずに済むように  この吭を裂いて しまわぬように――

(久保帯人『BLEACH 11巻』集英社 より)



BLEACH二次創作第二弾。今度は我らが恋次さんです。
これは二次創作かしら。それとも、もう「捏造」の領域かしら……。まあとにかく、また降りてきたもので。

ドリームしているアホ恋次(「ドリーム恋次」シリーズ)を半平太が描いてくれた夜明けに、これは降りてきました。
何てギャップ。
あんな傑作ネタでさんざん笑った後なのに、時期選んで降りてこいよ、と思わないでもないですが、降臨しちゃったものは仕方がありません。


流魂街の星空は、さぞや綺麗だったことでしょう。
眩し過ぎる。なのに儚げ。
そんな思いもあったのかもしれない。


本当は、
「遠くできっとあいつが見ている星は、決して手の届かない天上で、俺を見下ろしている。」
で終わるつもりだったんだけど……
もう「哀恋次」は勘弁してやれと、私が思ったのか、赤犬の嘆きのパーシアン・シャフトが届いたのか……これこのように。
11巻の恋次の詩(上記参照)とは時期やらも違うので、「吭」(自身全てを含むと解釈)も「喉」(こっちはピンポイント)で。
「凍った指先で耳を塞いだ野良犬達」
には、当〜然、恋次も入ってます。ルキたんもね。
(……今ふと思ったけど、白哉も入れていいんじゃないのか……? ……あのムッツリ貴族莫迦兄貴……)


白哉は月ということで、星=ルキアがオフィシャルとなったわけでございますが。

――「星に向かって吠えるばっかで 飛びつく度胸もありゃしねえ…」――

……あんた、50年の片想いを、本人じゃなくプリンス・ストロベリーに先に告白してどうすんですか!!!!


いや、もう、ホントに……何でBLEACHの野郎どもは、大事なことを口にしないんですかね!
自覚が遅い、とかは置いといて……
態度で見せる。うんカッコイイよ。
それが男って生き物。まぁあるかもね。
だけどね、言葉にして言わなきゃ分かんない、伝わらないこともあるんだよ! この馬鹿野郎ども――!!


はぁ……是非恋次には、ルキたんにちゃんと告白して欲しいものですが……どうだろね、こいつ?
「別にあいつが元気で、ついでに笑って幸せにやってけんなら、それでいいんだよ」とか、めっちゃ思いやがりそうですね……
ダメよ、恋次! 例え物の見事にフラれようとも、「そんな対象として考えたことなど無かった」とか言われようとも、それでもキッパリキッチリ想いを伝えなきゃ! (←恋ルキ派にあるまじき発言が混ざっています)
……やー、仮に離れ離れになって、二度と逢えないかも、なんてことになったとしても、一番大切だっていう気持ちは永遠に変わらないんでしょうけどね、お互いに……


ルキたんには、一番大切な人がいっぱい。
海燕は、憧れと恋。一護は、恋愛を超越したトラスト。そして恋次に至っては、最早すべての愛情を含んだラブだと思うんですよ。
だから、ルキたん→恋次における図式が恋心スルーでも、夫婦として一番うまくやっていける相手は恋次だと思うんだけど……まぁそんな展開は絶対有り得ないな……(自分で言ってて悲しいよ)
でも、真面目な話(って、私はずっと大真面目だが。熱い私見が入ってるだけで)、この先どんな展開になろうとも、離してしまった手をずっと後悔し続けながら足掻きもがく……そんな日々には必ず終止符が打たれることと作者を信じています。
……恋次出て来なくなったら寂しいけど……(涙)
11巻を読んだ後の、「お前が家族だったんじゃないのか!!」って友人達との一致団結ぶり、忘れられません(笑)。



(☆ この作品・及びあとがきは、2004年10月に書かれたものです)




<2005年6月追記>

「遠くできっとあいつが見ている星は、決して手の届かない天上で、俺を見下ろしている。」
で終わらなくて良かった! 良かったよ!
「誰が放すかよ」(173話「end of hypnosis5 [Standing to Defend You]」)
恋次よく言ったァァッッU!!!!
(Tは逃避行中の
「分けろ 俺の肩にも」(155話「Redoundable deeds/Redoubtable babies」)です。
そうよ! ルキたんの過去ごと受け止めるのよ!!)
あとは……告白ですよ、恋次さん。何してんですか恋次さん。
二度もいきなりいなくなられて、この上まだ学習してないなんてことはありませんよね恋次さん?
まあちょっとそこ座りなさい、恋次さん?(笑顔で)















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