SCENE1  “Doll”






       <ソファーにドサッと座る>

カッファル「……最っっ低だったな、今日のハントは」


エノア  
「……アタシが悪いんじゃない」


カッファル(鼻で笑って)、よく言えたもんだな。あんな醜態さらしといてよ。

     おかげで1800ラダルの賞金首、みすみす逃がしちまった」


エノア   「連携がうまくいかなかったのは、カッファルのせいだろ。

     当然だよね、アタシのこと、パートナーだなんて思ってないんだから」


カッファル「……何言ってんだ。ちゃんとそう扱ってるじゃねぇか」

エノア   「かもね。人形の、って前提付きなら」

カッファル「……またその話になるのかよ。くだらねぇ……」

エノア  (遮って)「くだらなくなんかないっ! アタシはね、人形じゃない、人間なんだ! 

     何で分かってくれないんだよ
!!

         <テーブルを乱暴に叩く音>

カッファル
「いい加減にしろ!! 何度も言ってるだろ! お前はUA‐SV型ヒューマノイド、ロボットなんだよ! 

     何なら今すぐ機能停止にしてやったっていいんだぞ
!!


エノア
   「あっそう! じゃあやってみせれば!?



2   人「………!!(←睨み合っているB)




エノア   「………アタシ、ここ出てく」

カッファル
「……
(動揺を隠して)なに馬鹿言ってんだよ。行く所なんかねぇくせに」

エノア   「いくらでもあるだろ。ここよりマシなとこならね。はい、これ」

      <カードキーをテーブルに滑らせるように置く>

カッファル「……何だよ」

エノア  
「見れば分かるだろ。この家のカードキー。返すよ、もういらないか
ら」

カッファル「……(怒りを抑えて)エノア……」

エノア   「あ、それから、この家のセキュリティーシステムからも、アタシのデータ削除しといてね」

カッファル「……本気でいい加減にしろよ。そんなに俺を怒らせたいのか」

エノア      「……………」

カッファル(溜息)、いいか、エノア。冷静に考えてみろよ。お前はヒューマノイドとして、この世に存在してるんだ。

     俺が人間以外の何物にもなれないように、お前もヒューマノイド以外のものには、絶対なれない。

     何がそんなに気に食わねぇのか知らねぇが……」


エノア   (遮って)「うるさい!! もういい……っ!!

カッファル(かすかなB) (←驚いた)

エノア      「……もういいよ。充分分かったから。アタシが馬鹿だったんだ。

      ……あんたなんか……っ」


カッファル「…………」

エノア      「……さよなら」

       <扉を開ける>

カッファル「おい、エノア! 待て……!」


エノア      「何だよっ、ついてくんな!」

カッファル「ガキみてぇなことしてんじゃねぇよ!! 出てってどうする気だ!」

エノア      「どうでもいいだろ、そんなこと! あんたみたいな分からず屋、もううんざりなの!! 

     二度とこんな家戻らないから
!!


カッファル「……そうかよ! なら、勝手にしろ! くそったれ!!

   
  <扉を乱暴に閉める>











<COMMENT>   ※ B = ブレス演技


さあ、物語の始まりです。

短いながらも、アップダウンの激しい、結構な難所。
書くのは楽しいんだけどね、演じるとなるとね。

怒鳴りあうシーンは、収録がとても大変です。
でも、抑えた芝居にするのは嫌なので……
マイク割りに泣かされながらも、エノア役の霊凍嬢とカッファル役の瑠月さん、思い切り喧嘩してくれました。
その甲斐あって、エノアの「……あんたなんか……っ」は実に秀逸です。凄い好き。

ちなみに、その霊凍嬢が「一番難しい」と苦労していたのが、ここの「さよなら」。
全然別の物を読んでて、「この『さよなら』も難しいよね」と言ったのを聞いた時は、「軽くトラウマ!? ダメ出ししまくってゴメンね!」と心の中で叫びました(^^;)。
(演出という名の鬼のダメ出し大佐・泉)


ところで、SE(効果音)は、なかなかニュアンスに合うものがなくて、大部分自分達で実際に音を出して作ったのですが。
ここのテーブルを叩く音は、何度もバンバンバンバンやって、めちゃめちゃ手が痛かったです……
ドアもバンバンバンバン閉めまくってたら、親からストップがかかりました。

そんな感じで、色んな意味で体を張って製作しております(笑)。










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