「なぁに、そう構えなさんな。ちょいとばかり長いが、今からアタシが話すことを、ようく聞いてくれればいいだけさね」
そう笑って、この世界について知らないことなど何ひとつないという鷲鼻の魔女は、焼きたてのクッキーをすすめてくれた。
丸、四角、花、星、ハート、クローバー……形も色も実に様々。その賑やかな見た目も、鼻孔をくすぐる香りも、実に美味しそうだ。
だが、何でもこのクッキーは、食べる人によって味が変わるそうなのだ。しかも、そのひとつひとつでも全部違うのだとか。
なんて不思議な話だろう。そんなの聞いたことがない。
「甘いかもしれないし、苦いかもしれない。もしかしたら懐かしい味がするかもしれないねえ。故郷のお袋さんを思い出すような。
まあ、すべてはあんたの心次第さ。でも眺めてるだけじゃあ分からないよ? ほら、お食べよ」
僕の恐れを見透かして、意地悪げに魔女が目を細める。
勇気を振り絞って、僕は三日月型のクッキーを口に含んだ。
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