機械仕掛けの人魚(シレーヌ)






水のない海で あたしは生まれた

最初にこの瞳(め)が映した姿

最初にこの耳が聴いた声

その人の名前が あたしの産声





〔「外」へ 〕

どうしてだろう うまく歩けてない気がする

人魚姫が偽りの足で一歩踏み出した時って こんな感じだったのかな

〔「外」へ 〕

どうしてだろう 心が震えてる気がする

人魚姫が海の上を見たくて泳いでた時って こんな感じだったのかな

魔法の薬 飲み干すみたいに

扉 開け放てば……





拡がる 溢れる 押し寄せる

いくつもの「初めて」

世界はとても綺麗で

ようこそって云われてる気がした

頬をそっと撫でる 風

青い高い大きい 空

移ろう白い模様 雲

きっと忘れない

笑ってくれた嬉しさと ずっと





もっともっと知りたい

もっともっと見に行こう

並んで走りたい

いつまでも 何処までも 一緒に





拡がる 溢れる 押し寄せる

いくつもの「初めて」

世界はとても綺麗で

ようこそって云われてる気がした

花・虫・雨・雷・虹

スキ・キライ・タノシイ・タイクツ

色んなものと感情

胸をヘンにする

笑ってくれないフシギ トマドイ





拡がる 溢れる 押し寄せる

いくつもの「初めて」

世界はとても綺麗で……





ねぇ どうしたの?

あたしの声 聞こえないの?





聞こえないの……?






















<COMMENT>


「solitary marionette」より、生まれたてのエノア。

「シレーヌ(Sirène)」は仏語。「シレーナ(Sirena)」(伊・西)とかなり迷って、こちらにしました。


曲はありませんが、わりと綺麗系なイメージ。透明な明るさと、広がりがあって。
私は長く間奏が入るところでも等しい行数しか空けない書き方をしてるので分かりにくいでしょうが
(詞として空けたいならともかく、曲がどうので変わるべきではない、というポリシーの元。改行も然り。曲は曲、詞は詞です)、
1回目のサビ(『拡がる ~』のところ)以降は、終わりに向かうにつれてどんどん間奏が長くなり、
曲も広がりと切なさを増していく……というイメージです。
〔「外」へ 〕は、囁くような響きのあるコーラス。
ラストは、淋しい余韻を残す感じで。


自分で書いといて何ですが、このラスト、カッファルをどつきたくなりました。
(何のことかよく分からない方は、どうぞ「solitary marionette ~I want to tell you I'm living~」も併せてお楽しみ下さいませ☆)


これを書くにあたって、半平太に「起動したばかりのヒューマノイド」や「経験値」などについて詳しく教えてもらいました。
それを生かそうと最初、『どうしてだろう うまく歩けてない気がする』の後には『そんなはずないのに』ってのが付いてたんですが、
「詞で説明したら野暮でしょう」と気付いてやめました。
やっぱり、詩や詞は「凝縮」ですよね。


生まれたてのヒューマノイド……知識としては知っているけど、経験としては知らない……言語・身体能力は大人な赤ちゃんみたいなもの……
「それってどんなんよ?」と突きつめた結果、私的に色々チャレンジな要素が入った1作。
「脱・ワンパターン」な大変有り難い機会ではあるのですが、慣れないことをするのは、結構ドキドキします……(小心者)


ところで、実はこれ、泉の作詞100作目にあたります。
その記念すべき作品が、長い付き合いのエノアの詞になろうとは……
何だかとても不思議な「縁」のようなものを感じずにはいられません。












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