風の瞳
― Scarborough Fair ―




海へ辿る水

山(おか) 向かう道化

すべての生命(いのち)の理由(わけ)

風に 尋ねたい





迷う子供らが

か細い腕(かいな)で

抱いた夢の淡さ

風に 届けたい





果てない時間を

彷徨う旅人の

微睡みに響く歌を

風に 聴かせたい





世界は広くて

私 小さくて…

でも ここに生きてること

風に 伝えたい





―― 生命(いのち)よ

  宇宙(せかい)よ

歴史よ

未来よ

風は 風の瞳は

永遠(ずっと) 見つめている
――





出逢いと 別れが

瞬く 星の中

あなたを愛した意味

風に 教えたい
















<COMMENT>


ゆっくり読んで頂けると嬉しいです(どれもそうですが、これは特に)。


サブタイトルにもあるように、かの名曲、「スカボロー・フェア」に詞をあてたもの。
「道化草紙」という私のオリジナルファンタジー小説(発表予定はありません)のイメージで(あまりにもピッタリなんですもの……!)。


サイモン&ガーファンクルでお馴染みのこの曲。
好きな方も多いかと思われますが(私も大好きです)、イメージが違っていても、どうか怒らないで下さいね。
元々「スカボロー・フェア」は、16世紀頃のイングランド民謡。
街から街へ旅する吟遊詩人達によって歌い継がれてきたこの曲は、時とともに詞やアレンジが変化し、現在では数多くのバージョン・何十種類もの歌詞が存在しているのだとか。
その中の最もよく知られている歌詞の一部を、ポール・サイモンとアート・ガーファンクルが歌い(1966年発表サードアルバム「Parsley, sage, rosemary and thyme」)、この曲は有名になったそうです。
サイモン&ガーファンクル版も、オリジナルではないのですね。
数ある「スカボロー・フェア」のひとつ、として受け止めて頂けると幸いです。
(ちなみに、中世では自分が創った曲などの芸術作品にクレジットをつけなかったらしく、「スカボロー・フェア」の作者は、残念ながら不明だそうです)


曲をご存知の方は、是非口ずさんでみて下さいませ(一部符割りを変えちゃってますが……)。
ダッシュ(――)の中はオリジナル追加分。
メロディーもありますが、伝えようがありませんので……大島ミチルさんの幻想的で壮大なアレンジをご想像下さい(言うだけはタダ)。


私がこれを書いたのは、まだサイモン&ガーファンクル版の訳詞を読んだことのない頃。
(その分名曲に出会うのが遅れたわけですが、もし先に知っていたら、この詞は書けなかったかもしれません)
ライブ演奏で耳にしたその旋律が、何処か淋しく、儚く、そして美しく……
吸い込まれるように胸に残り、今では私の一部となりました。
既存の曲に詞をつけるのはたまにやりますが、自分の小説のイメージで書いたのは、今のところこの1作だけです。


「風」がキーワードの物語。

運命の流れに逆らって、道化達は歩いて行きます。















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